逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る【2/14 後日談追加】

 目が合ったエステリーゼは、ふわりと花がほころぶように微笑んだ。

「わかりました。これからは友人として、よろしくお願いしますね。ジュード様」
「あ、ああ……!」

 彼女から名前を呼ばれるのは初めてだ。
 ただ名前を呼ばれただけなのに、ときめきが抑えきれない。そこにまだ愛などないとわかっているが、ぽかぽかと胸が温かくなるのを感じた。

 ◆◇◆

 俺はこの興奮を抑えきれず、帰りの馬車でキールに詰め寄った。

「キール、やったぞ! 友人の座を獲得したぞ。すべてはキールのおかげだ!」
「……それはようございました。おめでとうございます」

 キールは灰色の瞳を細めて、穏やかに祝福してくれた。
 その反応を見て、やはり先ほどのことは夢ではないのだと感慨深くなる。

「友人となったのだから、もう逃げられることはないよな。これで安心だ」
「…………」
「ん? どうしたんだ、キール。難しい顔をして……」
「ジュード様。あなたの目標は何ですか? エステリーゼ様と婚約なさりたかったのでは?」

 何を当然のことを聞くのだろう。
 俺は疑問を抱きつつ、しっかりと頷いた。

「無論、そのつもりだ。だが焦りは禁物なのだろう? だったら、まずは友人として愛を育んでいけば……」
「ジュード様、それは違います」
「む?」