逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る【2/14 後日談追加】

(いや、逆だ。今を逃せば、このまま一生言えない気がする……!)

 俺は自分の拳をギュッと握りしめ、ありったけの勇気を絞り出し、今まで面と向かって言えなかった真情を初めて吐露した。

「…………ドレスで着飾った君は、とても、とても綺麗で……。ただそれを口にするのはなかなかに勇気が要った」

 君以外の女性には興味はない。
 いつだって、エステリーゼは俺にとって特別だ。
 他の令嬢に社交辞令を述べるのと、好きな女性を褒めるのとでは難易度がまったく違う。

「君はもう気づいているかもしれないが、俺は女性を褒めることが苦手なんだ。でも、君のあの笑顔を見たとき、俺は恋に落ちた」

 決死の覚悟で告げた告白に、エステリーゼは黙って聞いている。
 否定も肯定もしない様子から、俺の言葉の真偽を疑っているのかもしれない。
 それとも、告白の一部に嘘を織り交ぜていることに気づかれたのだろうか。

(……本当は最初の出会いですでに恋に落ちていた。あのときの、君の泣きそうな顔がずっと忘れられなかった。だがこの本音をそのまま伝えてしまったら、君は嫌がるだろうな。それに舞踏会で見せてくれた笑顔にときめいたのも嘘ではないし……)

 彼女はもう茂みで震えているだけの女の子ではない。
 凜と背筋を伸ばして堂々とする姿は気品に満ちており、立派な淑女として美しく成長した。