逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る【2/14 後日談追加】

 俺の手を振り払い、エステリーゼは脱兎のごとく逃げだした。いつになく逃げ足が速いせいで、すぐに彼女の姿も見えなくなる。
 周囲は静けさを取り戻し、俺だけがその場に取り残される。
 悲しいことに逃げられるのはもう慣れてしまったが、どうも釈然としない。なぜなら、今日の彼女の反応には少なからず手応えがあったから。
 これまで友人という立場で接してきたからわかる。
 当初は警戒されていたが、今では俺のことも憎からず思ってくれていることを。

(それなのに……どうして求婚を受け入れてくれないんだ?)

 何に怯えているのかわからないが、求婚の話をするとエステリーゼは我に返ったように顔をしかめ、絶対に首を縦に振らない。
 あともう一押しだと思うのだが、エステリーゼの心は難攻不落の城のように守りが堅い。
 まるで鋼のような強情さに、俺は焦れる日々を過ごしている。

(くっ……一体どこに行ったんだ!?)

 息を切らしながら、卒業した学び舎の中を必死に探す。
 彼女の性格からして静かなところに逃げ込んだはず。放課後に人気が少ない場所を思い出し、中庭に向かった。
 俺の予測は当たっていたようで、奥に植えてある木の横にエステリーゼの姿を見つけた。

「エステリーゼ……」

 名を呼ぶと、これ以上になく鋭い眼差しが向けられた。