逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る【2/14 後日談追加】

 そう伝えたら、彼女はまた逃げるのだろうか。俺の前から。
 正直、わからない。友人から恋人に昇格できるほどの親愛はまだ勝ち取っていない。
 告白して逃げられるぐらいなら、友人のままでいい。臆病者と思われてもいい。今は少しでも彼女のそばにいたい。
 もし失敗して、違う男の元に行かれたらと思うと、頭がどうにかなりそうだ。
 せっかく築き上げてきた彼女との関係を壊したくなかった。
 一歩踏み出すのはまだ先――――俺はいつものように問題を先送りにして社交に励んだ。
 彼女の心を正確に把握するなんて、天空神でもない限り、不可能なのだから。

 ◆◇◆

 最初は戸惑っていた彼女だったが、今では俺がダンスに誘うと微笑んでくれるようになった。嬉しい変化だ。ただし、舞踏会では筆頭公爵家の嫡男として顔つなぎの仕事があるため、エステリーゼにダンスを申し込める回数は片手で足りるほどだった。
 それでも何度か踊ったことで、お互い少しだけ肩の力も抜けてきたように思う。

(きょ、今日こそ言うんだ……!)

 ドレスアップしたエステリーゼは今日も一段と美しかった。
 透き通るような純白の肌をさらし、シャンデリアの下で見下ろす彼女は華やかなドレスに負けない気品に満ちていた。