逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る【2/14 後日談追加】

 彼女がこれを着ることはないと思っていても、彼女に似合うドレスを着せたい欲求は抑えきれず、年々デザイン画だけ増えていた。
 最先端の流行を取り入れながらも、エステリーゼが気に入るドレスを想像するのは心が躍る。できれば俺の前で着て見せてほしい。絶対似合う自信がある。
 だがルカは渋面になり、俺の両肩に手を乗せた。心なしか、その顔は哀れみが混じっていた。

「ジュード。友人として忠告しておく。それはやめたほうがいい」
「だが、俺が選んだドレスを彼女に着てもらいたい」
「…………めでたく婚約した暁にドレスを贈ればいいんじゃないか?」
「なるほど。では、未来の楽しみに取っておくとしよう」

 エステリーゼと恋人になれる日が来るかは天空神のみぞ知る。
 とはいえ、未来を夢見ることぐらいは許されるだろう。待つことはもう慣れている。楽しみを先延ばしにするぐらい、今の俺には何の苦もなかった。

 ◆◇◆

 翌年、社交界デビューを果たした彼女は堂々としていた。同年代の令嬢が初めての舞踏会で緊張している中、エステリーゼはやけに落ち着いて見えた。
 デビュタントの目印として純白のドレスに身を包んだ令嬢たちは、家の家格順に国王陛下と王妃の前で名乗り、頭を垂れていく。そして両陛下からお祝いの言葉を賜る。
 その後も彼女は粛々と社交をこなしていた。