逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る【2/14 後日談追加】

 ううむと顎に拳を当てて思案に暮れる。
 鏡に向かっての秘密の特訓は、毎日の習慣となった。





 いよいよ来年は彼女も社交界デビューを果たす。
 人生は何が起こるかわからない。
 適度な緊張感と毎日の鍛錬は大切だ。場当たり的な対応では根本的な解決にはつながらない。常にあらゆる可能性を考え、万が一に備えて最悪の事態のシミュレーションもして対策を練る。
 しかしながら、何事にも例外というものはある。

「……ルカ」
「どうした? お前がそんな顔をするなんて、何があった?」
「折り入って相談があるのだが……」
「へえ? ジュードが俺に相談なんて珍しいな。面白い理由なら聞いてやってもいいけど?」

 軽口を叩く割に、ルカは真剣な目をしていた。
 親の派閥に関係なくつるんでいる腐れ縁だが、同年代で素の状態をさらけ出すのはルカ以外にいない。それはルカも同じだ。
 性格も趣味も違う俺たちが今も関係を続けているのは、メリットデメリット関係なく話せる唯一の間柄というのが大きいだろう。
 それに女性関係に明るい彼なら、何か妙案を授けてくれるかもしれない。

「エステリーゼの周囲から男を遠ざけたいのだが、どうしたらいいだろうか」
「…………は?」
「彼女は魅力的な女性だ。しかも婚約者はまだいない。彼女は常に男に婚約者の座を狙われていると言っても過言ではない」
「いや、それは過言だろ」