逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る【2/14 後日談追加】

 これでは恋愛初心者ということが丸わかりである。

(心を込めて言わなければ意味がないというのに! なぜ俺はこれほど不器用なんだ)

 鏡の中に映るのはエステリーゼではないのに、すでに緊張はピークを迎えている。
 ただの予行練習でこのざまでは、一体いつ成功するかわからない。ヴァージル公爵家の次期公爵ともあろう者が情けない。

「俺は……君が好きだ」

 いつか伝えたいと思っていた言葉を吐き出す。
 園遊会で初めて会ったときのことを思い出しながら、俺はつぶやくように言った。

「出会ったときの君は……まるで妖精のようだった。泣きそうな顔もとても可愛くて……いや、これは言わないほうがいいな」

 せっかくならエステリーゼが喜ぶような言葉を贈りたい。
 俺の好きな点と、彼女が褒められて嬉しい点が同じとは限らないのだから。

「君の髪をずっと触ってみたいと思っていた。風になびく髪を押さえる仕草に目を奪われた。その緑の髪は色鮮やかで、見ているだけで気持ちが和らぐ」

 彼女を賞賛するにふさわしい表現はどれが適切だろうか。
 エステリーゼは見た目だけでなく、中身も素晴らしいのだ。困っている人がいれば庶民にも手を貸すぐらいの優しさをはじめ、普通の貴族令嬢にはないものを彼女は持っている。

「まるで女神が降臨したような輝き……。いや、何か違うな……もっと彼女にぴったりの表現があるはずだ……」