涙を流しながら私を見つめるルークの瞳にはリアムと同じように光がない。


「僕、実は孤児なんだ。孤児の世界はとっても狭い。無知は非力だ。それが嫌だった僕はいろいろな手を使って自分の世界を広げた。でも所詮孤児だど限界があるでしょ?エマはそんな僕に世界の全てを見せてくれて、僕の狭かった世界を広げてくれた。そして何よりも両親に捨てられ本当の愛を貰えなかった孤児である僕に本当の愛をくれた。そんなアナタを僕は愛してしまった」


未だに涙を流しながらもにっこりとルークが私に微笑む。

こんなこと、おかしい。
絶対に。


「エマも僕と同じだ。誰からも愛されず、愛に飢えている。だから今度は僕がエマを愛してエマを僕で満たしたいんだ」


ルークも壊れてしまった。
仄暗い笑みを浮かべるルークは確実に正気ではない。

彼もまたこうするしかなかったのだ。
終わりのないこの宮殿での生活で私に追い込まれ、こうやって自ら壊れなければ、正気でいられなかった。
いや、もう正気ではないけれど。

今の段階でルークの目をすぐに覚まさせることは無理だ。リアムのように長期戦で考えなくては。


「…そう。ルーク、アナタは私からの解放を望んでいないのね?」

「そうだよ、エマ。これから先もずっとアナタの側に居させて。そしてもう二度と僕を捨てるだなんて言わないで」

「…わかったわ」


もう一度一応ルークの意志を確認したが、仄暗く笑うルークの意志が急に変わるということはもちろんなかった。