君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように

「『何度記憶をなくしても、君に好きと伝えるよ。』っていうの。男の子が記憶喪失になっちゃって、好きな女の子のことだけ忘れちゃって、それで……」

「あ、ストップ。それ以上は言わないで」

「え、どうして? あ、樹くんも読むから? ネタバレになっちゃうか」

「うん、そう。読み終わってから栞と感想を言い合いたいし」

「そっか、そうだね」

「だって俺栞と本の話をしてるのが一番好きな時間だからさ……なんつって」


 言葉の途中で恥ずかしくなったのか、樹くんが冗談めかして言う。

 私はおかしくなってくすくす笑う。

 そして彼をじっと見て、はっきりとこう言った。


「私もその時間が一番好きだよ。樹くんと一緒なら、どんな時間でも楽しいけどさ」

「……栞。言うようになったなあ」

「え、ダメ?」

「ダメじゃないです。嬉しいです。……俺も栞がいれば、どんな時間でも好き」

「うん、私も」


 ――そう、どんな時間でも。どんなあなたでも。一緒にいられるのなら。

 私はそれだけで世界一の幸せ者なんです。

 私が開いていた本を閉じると、樹くんがその手を握ってきた。