君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように

 私のことを、もう好きになってくれないんじゃないか。

 ――そう思う瞬間すらあった。

 だけどその度に、私はやっぱり図書館ノートを開いたんだ。

 樹くんの文字を見て、私を励ます言葉を見て。

 私が諦めちゃだめだ。

 樹くんを信じて、待つんだって。

 例え樹くんがすべてを忘れても、もう一度最初から恋をし合うんだって。

 そして樹くんは、手術から三日後に目を覚ました。

 目覚めた後、彼が私の名を呼んだ瞬間は、感極まって号泣してしまった。

 ……って、今思い出すとその時のことはちょっと恥ずかしい。

 その後リハビリを経て、倒れた日から一年が経った今。

 樹くんは、何の後遺症もなく、穏やかな日常生活を送っている。

 一緒に学校に行って、一緒に帰って、放課後はデートをして。

 そんなありふれた高校生の恋人同士の日常を、私はとてつもなく幸福に思っていた。

 
「それで、なんていう本を読んでたの?」


 樹くんは私の隣に腰を下ろし、尋ねてきた。

 傍らにいる樹くんの体温をほんのりと感じ、心の中が温まる。