君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように

「ごめんごめん。ちょっと検査が長引いて」

「えっ……? 大丈夫なの……?」

「いやいや、大丈夫。一年経ったから、念入りにやっただけ」


 何か問題があったから長引いたんじゃと思ってしまった私だったけれど、樹くんは軽く笑って言った。

 まるで私を安心させるかのように、軽く。


「もう、すぐ心配するんだから栞ってば」

「だって……。でもよかった、大丈夫みたいで」

「うん、本当に大丈夫。もう健康体」


 血色のいい顔で樹くんは笑う。

 一年前の、青白く生気の薄かった彼の顔を忘れそうになるくらいに、今は溌溂としていた。

 ――去年の樹くんの、手術の後。

 担当医は手術は成功したけれど、記憶喪失しているかどうかは樹くんが目を覚ますまではわからないと樹くんのご両親、悟くん、私に告げた。

 樹くんはその後、三日間眠り続けた。

 それは恐ろしく長い三日間で、昏々と眠る樹くんを見るたびに、私は何度も心が折れそうになった。

 もう私の前で彼は笑ってくれないんじゃないか。

 すべてを忘れた彼は、目覚めた後私を見て「誰?」とよそよそしく言うんじゃないか。