文能(ぶんのう)学園高等学校。
中、高、大学と一貫のマンモス校だ。
私、夏目猫名はその広大な敷地内をひとりでさまよっていた。

「どうしよう…入学式始まっちゃうのに…」

今日は高等部の入学式がある。
絶対に遅れるわけにはいかないのに、あろうことかパンフレットをなくしてしまった。
慌てながら早歩きで歩いていると、ふと校舎の横に立つ木の下に誰か寝ているのを見つける。

「誰だろう…」
「すぅ…すぅ…」

近づいて見てみると、なかなかにきれいな顔立ちの男の子が目を閉じていた。
でもこの子、私と同じ新入生の証である銀色のバッジをつけている。
もしかして…

「ねぇ、君迷子?」
「自分が迷子のくせに人を巻き込まないでくれる?」

…たずねた瞬間に文句を言われた。
彼はゆっくり起きあがると私を見て、

「来て」

と一言だけ言った。
そしてどんどん歩いていってしまうから、私は心配だったけど…
ひとりでここに残されても困る。
私は彼のあとを追った。