あたしが、お昼の話をした
桜の峠を、過ぎて半時もすると
また茶屋跡ってゆーのが
出てきたねん。

ほんま、リンネさんがおらん
かったら、あたしら絶対
古道歩きなんかできんかった
思う。
石堂茶屋跡ゆーのんを過ぎた頃
なると、また
昼やのに薄く霧が出てきよった。

「また、異世界ん中やー。」

思わず出た、あたしの言葉に

「あそこが賽の河原地蔵です。
古道にあるいくつもの難所に
お地蔵さまとか、石仏が、
ああやってあるのを 昨日も
見たでしょ?
古道でカネニナった旅人で、
生まれがわかれば、庄屋さんが
手紙を送って、立ててもらうん
です。でも、ここは少し違い
ます 。ああやって今も石を
積む人がいるんですよ。」

???カネニナル

言われてみてみたら、
向こうの霧ん中、人影が2つ
屈んでるのが見えた。
びっくりするやん!

『『おはようございます!』』

「「「おはようございます」」」

賽の河原ってあれやんな、、。
アノよにある
サンズの川っ原で石積むとこ
やんな?

瓦みたいな石が
小山になってるのんを
お地蔵ーさんが見てるような
とこで、
あいさつしてくれた
若いイケメンの
お2人さんが、石積んでる。

「石、積んむとええことある?」

あたしはイケメンの真似して
石を拾う。

「オクリですかね。まあ、
旅の無事とか
思ったりもしますけど。僕ら、
大学のレポートで古道の石碑とか
調べてるんで、まあいろいろ、」

オクリ、、、

銀ぶちメガネのイケメンが、
黒ぶちメガネのイケメンを見て

「だいたい、江戸時代のものが
殆どなんで、面白いんです。
ここの地蔵尊は狼でサトリに
なってしまったお坊さんの
為に建てられたんですけど」

サトリ、、

こんどはそっちの黒ぶちメガネが
いろいろ話てくれるし。

キコさんは、小山に積まれた
石とお地蔵ーさんを写真にしてる

「あたしら、昨日もたくさん
お地蔵ーさんやら、歌かいた石
見かけたわー。あれ、全~部
調べんのん?大変やん。」

拾った石をあたしも、
積んでみる。

「昨日は大雲取越えだったんです
けど、今日は伊勢路に向かう
つもりなんですよ。
チョウコさん手をあわせて。」

小姑か?
リンネさんは、
メガネイケメン達に愛想よう
してしゃべるだけやなくて、
ほんま 細かいねん。
まあ、手ぇ合わせるけどな。

「じゃあ、地蔵茶屋のお地蔵群も
見ました?ちょっと何 です
よね?さすがあの数あると。」

地蔵茶屋?
よー覚えてへんけど。
後半なんか夕方で暗かったし、
疲れたてたし。

「あー、チョウコさん、休憩した
とこですよ。でも霧が凄くて
暗かったから覗いてないです。
ハチスなんですよ。あそこは」

ハチス、、ん?
あれか!
忌み言葉な!そでの表を
隠しみたる。

ハチス=お堂ね!

リンネさんが言うんには
休憩場所のあたりに
お堂があったちゅーことやね。

「それは残念ですよ。古道でも
あれだけの地蔵尊があるのは
中々ないんです。それも、
普通の商人の寄進ですから。」

ついでに表の続き見たら、
男=サオやった。
てことは、メガネサオ達?か?

「へぇ、商人でもえらい金持ち
やねんね。京都とかの老舗さん
とか、よーやるもんなあ。」

銀ぶちメガネサオ。
なんや、この言い方うける。

ほんでも、そういえば、
高野山でも奥の院とかに企業の
寄進するのんとか、
伏見の鳥居とかあるから、
あーゆー似た感じやろなー。

「どうですかね。泉州の魚屋さん
が、旅人の安全祈願と、祖先の
供養にって建てたそうですが」

黒ぶちメガネサオが
思わん言葉をゆーてきた。

「魚屋、、先祖供養、、」

メガネサオ達は
他にもこの先に
皇太子さんが来た記念の碑やら
分かれ道んとこの
首なし地蔵ーさんとか
教えくれたけど、、

あたしには、その
魚屋のお地蔵ーさんのことが
えらい、胸にキテしまう。

「チョウコさん?どないし
はったん?若い子ぉらに、
気後れですのん?リンネさん
見てぇ、ええ感じに写真とれて
るや思わへん?これどない?」

後のメガネサオの話も
キコさんの声かけも
あんまし、頭に入らへん。

「いやー、なんかさ、なんで
魚屋さんが古道にお地蔵ーさん
いっぱい建てたんやろって、
思ったら、きっと ご先祖さん
漁師してたんちゃうかって
なんや考えたんよ。アホやわ」

急に、この古い道が
リアルに普通の人らが
いろんな 思いで通ってたんやな
とか感じてもーたん。

きっと あたしとおんなじ気持ちで
ここを通った人らがいてる。
魚屋、わかる。わかるで。
あたしには。



メガネサオ達と別れて、
リンネさんが

「古道から林道に外れますけど、
少し下るとバイオトイレあり
ますから、トイレ休憩します」

と声かけてくれても、
あたしはどこか上の空やった。

それこそ
意識的戻ったんは、、

「うわ!くっさ!バイオトイレ
くっさ!めっちゃ、匂うやん」

ひっどい、
トイレのひっどい、
匂いでやった。

「チョウコさん、おっとろしい事に、あれ見てぇ。ベンチありはる
ベンチがこの真ん前にありはる」

キコさん、殺生やわ。
もしかしてもしかしてやん!

「この辺りでお昼する人も、
いてますから、ベンチですね」

「うそやろ!ないわー!
もしかして、ここでお昼ちゃう
やんな!あたしとリュウちゃん
のメモリーを、くっさいとこで
せなあかんのん、嫌やで!!」

長い古道にはトイレは
大切やし、キコさんが
やたらトイレ場所きいてくるから
リンネさんが
気ーきかせてくれて、
わざわざ古道から林道に降りて
トイレに連れてくれたけど!!

「ぜつつたいいい!むり!!」

あたしはさっきまでの
ナーバスとセンチメンタルブルー
ぶっ飛ばして
断固反対する。

「チョウコさん、時間、見て」

そんなあたしに、
リンネさんは腕時計を
見せてきた。

「え、9時46分?なん?」

まだそないなん?

「お昼には~早いわなぁ。」

キコさんも呆れてあたしん顔
見てるし。

「えー!なんや。ほんでも、
いーかげんお腹すいたわー。」

考えたら、今日の出発6時過ぎ
やったわ。て、
リンネさんが
すごい悪い顔して、

「じゃあ、このベンチで、」

目の前のカオスなフレグランス
ベンチを指さしてくる!!

ない!絶対ない!ここなら
そくリバースする!

「「いやや!!」」

あたしとキコさんの息は
バッチリやんな。