一ヶ月後。

 バレンタインデイの日と同じカフェ。奇遇にもあの日と同じ席で、先輩と私は向かい合わせに座っていた。

「はい」

 テーブルに並べられたのは薄黄色の小ぶりな袋4つ。

「ホワイトデイのお返し」

 先輩はニコリと笑う。

 形や大きさからして、クッキーか何かが入ってそうな可愛らしいパッケージだった。

「……先輩、4つありますけど」

 しかも、全く同じものに見えるんだけど。

「そりゃ、寺本から4つもらったし?」

「えー。私は本命用の大きいのだったじゃないですかー。後のは義理チョコですよー。てか、私は預かっただけで、私からは1つだけだし」

 思わず、口を尖らせると先輩は、

「あはは。冗談に決まってるだろ。……はい」

 と楽しげに笑いながら、鞄から綺麗に包装された小箱を取り出した。

「え?」

「これが寺本の分」

「あ……ありがとうございます!」

「後、こっちもどうぞ」

 と、先ほどのクッキー(?)の袋を一つ取ると、小箱の横に置いた。

「わ、いいんですか?」

「もちろん。寺本の怒った顔も見られたし溜飲が下ったよ」