相変わらず、丁寧に夢に勉強を教えている陸斗をチラチラ見てしまう。



「ねえ、陸斗先輩……」



夢が真剣な声でそう呟く。



「どうしたの?」
「陸斗先輩に相談があるから、連絡先交換しませんか?」



甘い声。
上目遣い。

今の夢は誰よりも可愛い__



でも、心の何処かで陸斗は夢の誘いを断ってくれる。そう、信じている。

なのに__



「いいよ!」



そう言って、連絡先を交換する2人を見ていると涙が出そうで、トイレに移動する。



「私とも交換して無かった連絡先……。夢と交換するんだ……」



洗面所に移動すると手を洗って、ポケットに入れてあったこんぺいとうの入った瓶を取り出す。



夢と夏海と出会ってから、あまり必要が無くなっていた心の安定剤。

それが、最近は不可欠な物になっている。

手のひらに1粒取り出すと、口の中に放り込んだ。



もう、泣かない。

そう決めて、陸斗の部屋に戻ると2対2で別れて仲良く喋っている。



ズキン__



なんだか、自分がおじゃま虫になった気がしてこの場に居辛い。



せっかく、大好きな友達と陸斗と一緒に時間を過ごしているのに、こんな思考回路な自分が情けなくて、嫌いだ。