「新を殴ったとき、まるで人間みたいな感触があった」


空き教室に身をひそめながら、和樹は言った。


さっきからずっと自分の両手を見つめている。


「俺が殺したのは、本当に悪霊だったのか?」


「何言ってるの和樹。きっと、新はそうやってあたしたちを混乱させてるんだよ」


相手が悪霊でなかったら一体なんなのか。


あれだけ躊躇もなく次々と友達を殺して行くなんて、生きた人間のできる仕業じゃないに決まっている。


あたしはまだ震えている和樹の手を両手で包み込んだ。


「大丈夫だよ和樹。守ってくれてありがとう」


そう言うことでようやく自分のしたことに納得できたのか、和樹は何度も頷いた。


今はとにかくここから出ることを考えないといけない。


新がさっきの攻撃で消えてくれていればいいけれど、そうとは思えなかった。


きっと新はまた起き出して、次のターゲットを選んでいるに違いない。


でも、物理的な攻撃がきくことはわかった。


逃げるための時間稼ぎができるのは確かだ。


同時に、あたしたちに武器を持たれたくない理由も判明した。


攻撃すると、弱るからだ。