職員室から逃げたした瞬間、「助けてくれ!」という声が聞こえてきて一瞬足を止めた。


「今の、幹生の声だった!」


あたしの手を握っている和樹へ向けて言う。


和樹は今にも泣きだしてしまいそうな顔で職員室へ視線を向ける。


「俺たちは武器を何を持ってない。今助けに行くことはできない」


小さな声で、新に気がつかれないように言う。


「でも幹生が……!」


このままほっといたら、千秋のように殺されてしまうかもしれないんだ。


千秋を刺した時の新はなんの迷いもなかった。


あたしたちが近くにいても、気にしていない様子だった。


「わかってる。だから、早く武器を探して戻ってこよう」


和樹はそう言うと、あたしの手をしっかりと握り直した。


絶対に離さない言われているようで、体の力が抜けていくのがわかった。


一旦ここから離れれば、もう幹生は助からないかもしれない。


こうしている間にも、あの包丁は幹生につき立てられているかもしれない。


そう思うとどうしてもここから動くことができなかった。


こんなの、仲間を見殺しにすることと同じだ。