新は不機嫌そうな声を上げたが、目を覚ましてくれた。


『旬?』


そして俺の異変にすぐ気がついてくれたんだ。


『旬どうしたの?』


俺は答えられない。


ただ息がしたくて、必死で手を伸ばした。


その手はなにも掴むことができず、空中を彷徨うばかり。


こんなことになったのは初めてで、怖くて涙があふれ出した。


『お母さんお父さん起きて!旬がおかしいよ!』


部屋から飛び出した新が叫ぶのが聞こえてくる。


両親が駆けつけてくれた時には本当に死んでしまうんじゃないかと思って全身が震えていた。


『旬、声が聞こえてるか!?』


お父さんの言葉に頷く。


お母さんが近くで救急車に電話をしている。


新は恐怖から泣きじゃくっている。


そんな光景が急速に遠ざかっていく。


目の前に真っ白なフィルターをかけられたように意識が遠ざかって行った……。