「こらぁ!お前、水に入ると眉毛なくなるんだろ!だから、潜らないんだろぉ~?」

先生が私の眉毛に手を伸ばす。

「消してやる~!」

子供みたいな顔して、私の眉毛消そうとしてる先生。

消えないよぅ、自眉だもん。

「補習免除・・・やだもん。」

揺れる水面を見つめて、そう呟いた私の耳元で、


先生が・・・


「石、3つ探せたら・・・今日夜景いく?」


私、先生のこと見つめたまま動けなくなった。

ただ、涙が溢れた。

先生は、私の涙に気付いたのか気付いてないのか、私の顔に水をかけた。

「あと、10分だぞ!早く探せ。」


私は水に潜るのが苦手。

だけど、先生とのデートの為なら頑張るよ。


「やったぁ~!先生、2つ見つけたぁ!」

先生は、子供を見守るお父さんみたいに微笑ましい表情で私を見てた。

「あと、1つだな。あと3分頑張れ!」


絶対に探してみせる。

だって、今日先生と夜景なんて・・・夢みたい。

先生から誘ってくれたなんて信じられない!!!


でも・・・石がない・・ないよぅ。先生。



もうみんなに取られちゃったのか、どこを探しても石が見つからない。

目にも耳にも水が入る。

泣きそうな顔で、先生に助けを求めに行った。


「せんせ~、見つからないよぅ。」


見るに見兼ねた先生は、ゴーグルを付けてプールへ足を入れた。


「仕方ねぇなぁ、世話の焼けるやつ・・」


先生はまるで人魚みたいにしなやかに潜る。


ゴーグル姿も素敵だなぁ、なんてぼーっとしてる間に先生は遥か遠くに行っていた。


「矢沢!こっちこっち!」


先生の元までたどり着くと、私の手をグイっと引っ張って、手を繋いだまま水の中に潜った。


先生の指差す方向を見ると、ちゃんと石があった。


おそらく最後の一個であろうその貴重な石は、排水溝の横で助けを待ってるようだった。



必死で拾った私に、


水の中で、


先生は、 よしよし してくれたんだ。


誰にも秘密のプールの中でのひととき・・・楽しくて嬉しくて、ドキドキして・・


きっとこのキモチ一生忘れない。