「矢沢さん、ちゃんと体操してくださいよ。」


細身の体に

少しパーマのかかった髪。

雪焼けした肌が男らしい。


私達の班の担当のコーチはなかなかの素敵な人。


さっちゃんは、さっきから落ち着かない様子でそわそわしてる。


私は、こういう人にはときめかないんだなぁ。


もし、コーチの注意の仕方が

「矢沢、ちゃんと体操しろよ。」


だったら、少しはときめいちゃったかもしれない。

ただ先生っぽいのがいいだけなんだけどね。


でも、昔から少しえらそうな話し方の人が好き。


言い方は少し冷たいくらいなのに、実はすごく優しいってタイプに弱い。



たっくんを好きになれそうだと感じたのも、そのせいなのかな。



結局、私は


先生っぽい人にしか


ときめくことができない。



というか。



先生しか無理。



呆れたようにコーチはため息をついた。


みんなは、いつの間にかそのコーチを、こうちゃんと呼んでいた。


私は、見失った先生を探そうとまたキョロキョロしてた。