「じゃあ俺、そろそろ帰るね。…家のことも今は俺ひとりでやらなきゃだしね」

日も傾きかけた頃、そう言って旦那さんはわたしから手を離し、椅子から立ち上がった。

「…家事、大変?」

「ははっ、そりゃあ大変だよ。だから早く元気になって家に帰ってきてね」

「うんっ!ありがとう」

「じゃあまた明日の夜にね」

「ん、気を付けて帰ってね」

遠くなってく背中が角を曲がって見えなくなると、寂しい気持ちでいっぱいになって、やっと止まった涙がさっきよりもブワッと一気にこぼれ落ちてく。

ひとりきりで泣くと、涙を止めるタイミングを見失う。

どんどん、どんどんあふれでる涙。

この日は、泣き疲れて眠りに落ちた。