ごめんね。と、困ったようにふにゃっと笑う旦那さんの胸に顔を何度も擦(なす)り付けて、ここぞとばかりに旦那さんの匂いを堪能するわたしに、「聞いてる?」と、わたしから身体を離す旦那さん。
「聞いてる」
だからもう少し嗅がせて!!と、せがむけど
そんなわたしをそれとなく流して、ベッドに入るように促す。
でも、点滴していないわたしの右手を旦那さんはずっと握ってくれていた。
「仕事の日も、終わってから面会に来るからね。たぶんギリギリ間に合うと思うから」
「うん」
「次休めるのは手術当日になっちゃいそうだけど、平気?」
「…ん」
「手術、怖い…?」
「…っっ、」
「大丈夫。難しい手術じゃないって先生も言ってたろ?それに腹腔鏡で済むみたいだから、ね?」
旦那さんの優しい声に言葉に安心感を覚える一方で、それでも拭え切れない恐怖心が涙となって頬を伝う。
そんなわたしが泣き止むまで旦那さんは「大丈夫、大丈夫」と手を擦(さす)ってくれていた。



