離れない。離さない。


退院日。

旦那さんが病室に来たら抱き着こうと思っていたんだけど、わたしの両親も旦那さんと一緒に来たので流石に親の前じゃ恥ずかしくて我慢した…。

「それじゃあお父さんとお母さん、家に帰るわね。…旦那くんが居るから…大丈夫ね?」

お母さん…。

「落ち着いたらまた実家にかえっておいで。いつでも待っているからな」

お父さん…。

「じゃあ、娘をどうぞ宜しくお願いします」

お母さんが旦那さんにペコリと頭を下げ、旦那さんは

「はい」

と、一言だけ、でも力強く返事をした。

「じゃあ、ね…」

お母さん、寂しそう。

わたしは泣かないように我慢するので精一杯。

「またね…っ」

両親がエレベーターに乗り込むところまで見送り、両親を乗せたエレベーターの扉が閉じると涙がボロボロッとこぼれた。

「…大丈夫だよ。また会えるから」

旦那さんはこどものように泣きじゃくるわたしを引き寄せてふわりと抱き締めてくれた。

大人になってもこんな子供みたいで情けない。

でも、強くなれない。

わたしは、両親のことが大好きだから。

次は、いったいいつ会えるんだろう。

グスグスしていると、

看護婦さんがわたし達のところにパタパタと小走りで走ってきて、

「いたいたっ!これから退院前の診察があるから病室に戻ってっ」

「あっ!そうでした!すみません、すぐ!」

点滴は今朝早くに外れた。

なので、走ろうと思えば走れたけど
看護婦さんに止められて、なるべく早足で病室へと急いだ。