離れない。離さない。


病室へ戻るとわたしのベッドのところに夕食が運ばれていた。

本当はお昼からごはん食べて大丈夫だったけど、あんな状態で食べるどころではなかったから断った。

だから、この夕飯からやっと食べられる…!!

心が弾むと言うのはこういう時に使う言葉だ。きっと。

メニューは、
鱈(たら)のホイル蒸し、
コンニャクの油炒め、
ほうれん草のお浸し、
ワカメが申し訳ない程度に入ったおすまし、
丼に入った白米だった。

お世辞にも食欲そそる見た目しているとは思えないけれど、長らく絶食していたわたしにとってはどれもご馳走に思えた。

素早く食べる準備を整え、
まずは、おすましから。
と、人肌よりもぬるいそれを静かにすする。

…え、塩分!!

まずはそこに感動して、次に冷たくなっている鱈のホイル焼きを口に運んで、ひとくちひとくちを噛み締めながら咀嚼(そしゃく)してゆく。

なんて美味しいのっ!!

いや、きっと美味しくはないんだろう。
でも、4日半なにも食べられずにいたわたしにとってはやっぱりこれ以上ないご馳走だった。