…お母さんは、後悔している。
あの頃のわたしを信じなかったことを。
そして、わたしにいつも逃げ道を作ってくれる。
でも、でも、そんなお母さんの言葉にもう甘えるわけにはいかない。
いまのわたしには、旦那さんと言うかけがえのない人がいる。これからの人生を一緒に歩いてくれる人から、もう逃げはしない。
次々に溢れ出る涙をグッと必死で止めた。
ーーそこからだった。
徐々に気持ち悪さと目眩が退いてきたのは。
まずは上半身を少しだけ起こして、少しずつだけどオレンジジュースが飲めるようになった。
そして、お母さんに掴まりながら本当にゆっくりゆっくり歩きながらだけどトイレにも行けた。
ただ、トイレを済ませ病室のベッドに戻ってきたときにまた冷や汗がブワッと全身から吹き出たけれど。
そのうち体が軽くなって、お母さんとの会話も普通に出来るようになった。
そんなわたしの回復ぶりに安心したお母さんは「そろそろホテルに戻るわね」と言って帰っていった。
そんなお母さんをエレベーターの所まで歩いて行ってきてね見送ったあと、ふと窓に目をやるともう日が傾いていた。
お母さん、朝からこんな時間までずっとわたしの傍にいてくれたんだ…。
申し訳なさと感謝でまた鼻がツンッとしたけれど、それをグッと堪えひとり病室に戻った。



