離れない。離さない。


術後1日目。絶食終了。

「…ん、」

近くに人の気配を感じてゆっくりと目を開けるとお母さんがタオルを手に持ちわたしの顔にそれをそっと当てたところだった。

「ーあら、起こしちゃったかしら」

「お、母さ…」

いつの間にか酸素マスクは外されていて、今度は喉がカラカラに渇いて言葉がうまく発せない。

「凄い寝汗だから顔だけでも拭いてあげようと思って」

そう言えば、着ているものがグッショリと濡れていて冷たい。

「これだけ汗かいたんだから、喉渇いてない?」

その問いにコクコク頷くわたしを確認すると、

「もうジュース飲んでいいみたいだから、オレンジジュース買ってきてあげるわね」

と、素早く席を立った。

さすがお母さん。わたしが飲みたいもの解ってる…!

程なくしてわたしが大好きなメーカーのオレンジジュースを2本と温かい緑茶を買ってきてくれた。

オレンジジュース、やっと飲めるんだ!!

それだけで嬉しすぎて泣きそうになる。

飲みたいものを飲んで、食べたいものを食べるって当たり前なんじゃなくてとても幸せで恵まれている事なんだと、わたしは今回の事で痛感した。