離れない。離さない。


ーーー

ーーーーー


「…あっっ、」

ぼんやりとした意識のなかで重たい瞼(まぶた)をほんの少しだけ開けると左横から聞こえたのは大好きなひとの声。

「…目が覚めた?大丈夫?」

「…」

…何故だろう。声が出ない。

旦那さんに「大丈夫だよ」って、言いたいのに。

「……っっ、」

ほら、やっぱり声が出ない。

旦那さんはそんなわたしに気付いて、
「あぁ、」と困ったように笑うと

「無理しないで。酸素マスクしてるからだよ、きっと」

酸素マスク…?

右手で顔回りを触ると…確かに。

「目が覚めたら呼んでって言われてるからナースコール鳴らすよ?」

「うん」と言えない代わりに首をなんとか縦に降る。

程なくして看護婦さんが来て、素早くわたしの状態を確かめると、

「うんっ、問題ないみたいね!今日いっぱいは意識ハッキリしないと思うけど、明日になればそれも大丈夫だと思いますよ」

フフッと旦那さんに微笑む看護婦さんと、なんとなく恥ずかしそうにしている旦那さん。

「…?」

何かあったのかな?