離れない。離さない。


「顔色悪いわよ。具合悪い?大丈夫?」

わたしの真っ白な顔色を見て心配げに聞いてきたのはお義母さん。

「あははっ、大丈夫ですよ。この子血圧低いから朝はいつもこんな顔色なんです」

答えようとしたわたしよりも早く応えたのはわたしのお母さんで。

「ガハハッ、そうなんですよ!緊張もしているから余計かとは思いますがね。」

豪快に笑ったのはお父さん。

それから、うちの両親とご両親は話の花を咲かせてしまった。

検温、体内の酸素濃度を計り終えると、看護婦さんが、

「それじゃあそろそろ…」

と、手術室へ向かうように促してきた。

その言葉に対してピリリと緊張が走ったのはわたしと旦那さんで、両親達はすっかりリラックスしてしまっている。

…まぁ、過敏に心配されるよりは良いのかな。

そう思うことにしつつ、ひとつ吐いたため息が震えてしまった。

そんなわたしの震えを聞き逃さなかった旦那さんがわたしの右手をキュッと握って、

「大丈夫だから。なんの心配もいらないよ。眠って起きたらもう手術なんて終わってるからね」

そう言った旦那さんこそ心配でたまらないって顔をしていて。

でも。

「うん。頑張ってくるね」

たっぷりと勇気を貰えた気がしてわたしは手術室へと足を踏み入れた。