離れない。離さない。



ついスマホが気になってしまってちょいちょい開いてしまう。

とっくに消灯の時間は過ぎて、なんならもうすぐ日付が変わってしまう。

ーーー寝れない。

このまま朝まで寝られなかったらなかったでどうせ麻酔で眠らされるんだから無理に寝ようとしなくてもいいのかな?とも思うけど、そういうわけにもいかないんだろうなぁ。

すると、ジャクジャクと看護師が使っているシューズの音がこの病室に近付いてきた。

「あら、まだ起きていたの?眠れない?」

直ぐ様わたしがまだ起きてる事に気付いてくれた看護婦さん。

この人は何かと良くしてくれるんだよなぁ。

うんうんと頷くわたしに、「そりゃそうだよね」と困ったように笑うと、

「なんなら点滴に本当に弱い睡眠薬入れてあげようか?入眠をスムースにさせる補助薬みたいなものだけど、緊張してる時とかにわりと効くよ」

「じゃあ、お願いします…。今からドキドキで…」

ハハッと力なく笑うわたしに看護婦さんは

「そうよね、初めての手術だもの。不安になるよね」

点滴の袋に液体状の薬を注入され、少しだけ身体全体が冷たさを感じた。

それから程なくして、わたしはゆっくりと微睡(まどろ)みの中に引き込まれていった。