離れない。離さない。


「ーーーえ?旦那さんっ…!?」

そこには今日は仕事の筈の旦那さんがいた。

「お、麻酔の説明終わったのか」

旦那さんをかっこうの話し相手としていたお父さんが先に声をかけてきた。

「ええ。でもこの子が凄く怖がっちゃって…。こんなんで明日大丈夫なのかしらねぇ」

全く…。と、またしても重いため息を吐くお母さん。

そんな両親を無視してわたしは旦那さんの元へ歩み寄った。

「どうして…?」

「部長がね、お前の仕事はなんとかしてやるから奥さんの傍に居てやれってさ」

部長、普段は旦那さんのことコキ使うからムカついてたけど良い人じゃん…!!!

「それより大丈夫?顔色あんまり良くないよ?」

「あぁ、それなら麻酔を怖がっているだけだから大丈夫よぅ!」

わたしの代わりにお母さんが答えた。

そんなお母さんのことをギロリと睨む。

旦那さんに甘えるチャンスだったのに!!

そんなわたしに気付いたのか旦那さんは苦笑いしながら、わたしの両親に

「少しふたりで院内歩いてきます」

そう言って、わたしに「行こ」とアイコンタクトしてきた。

「そうね。歩けば少しは気分転換になるかも知れないしね。行ってらっしゃい」

そう言ってくれた両親に背を向けて病室を後にした。