離れない。離さない。


手術前日で、絶食3日目。


「なんだか麻酔って不思議なのねぇ」

「…うん」

「乗り物酔いしやすい人ならわかるけど、タバコ吸わない人のほうがダメなんてねぇ」

「…うん」

「でも良かったじゃない。極力アンタの体質に添った麻酔にしてくれるって言うし!」

「…うん」

「なによ、さっきから「うん」しか言わないで」

「…うん」

はぁぁっと盛大なため息を吐くのは、麻酔科で明日の手術に使う麻酔の説明を聞きに付き添ってくれたお母さん。

「今からそんなんでどうするのよ」

「だってぇ…」

「まだ麻酔して永遠に目覚めなかったらとか考えてるわけ?麻酔科の先生が「術後、麻酔から目が覚めるのを必ず確認するので心配ないですよ。麻酔に適さない病気も持ってないようですし、リスクは低いです」って言ってたじゃない」

「でも、絶対大丈夫とは言ってくれなかったぁ」

「当たり前でしょ。物事に絶対なんてないんだから。特に医者は絶対なんて言葉使えないでしょうが」

「うう…」

そうかも知れないけど、それでも「絶対大丈夫」って言葉の安心感が欲しかったんだよー。

しょぼんとしながら病室へ戻ると、意外な人がお父さんと話していた。