朝の祈りと聖歌を終え、朝食を終えた後に私達は院長・クロエ様のところへと赴いた。
 説明はアントワーヌ様がしてくれて、院長が疑問に思ったことは私に聞いてきた。それに、私が答えると――しばし考えるように目を伏せた後、ポンッと手を合わせてにっこりと笑った。

「まずは、やってみましょうか……神兵達にも声をかけるから、ちょっと協力してちょうだいね」

 そう言うと、クロエ様は私達を連れて建物の裏手へと向かった。
 そこでは、修道服を着た青年や男性が木剣で打ち合っていた。昨日の話だと、修道士や修道女で三十人くらいと聞いていたが――屈強な男性が十人くらいいる(思ったより多い)のに驚いたし、思えば夕食や朝食の時にいなかったので。訓練もだが、普段はこうして別行動を取っているということなんだろう。

(……って、言うか)

 ただでさえ知らない男性ってだけでも怖いのに、何人もいるとますます怖い。
 すると、昨日会ったラウルさんが駆け寄ってきてくれた。知っている顔に内心、ホッとしていると、ラウルさんはクロエ様に声をかけた。

「院長様、どうなさいましたか?」
「あら、ラウル。ちょうど良かったわ……あなたにも、声をかけるつもりだったのよ」
「「えっ?」」

 院長の言葉に、ラウルさんと私は同時に声を上げた。ラウルさんは不思議そうに、そして私はラウルさんが魔法を使えることに驚いてだ。
 そんな私の前で、クロエ様がラウルさんや他の神兵の人達に私の思いつきを説明してくれる。それから、クルリと私の方を向いて。

「この子の発案なの……さあ、イザベル? 実際、やってみてちょうだい?」
「はい」

 いきなり振られてちょっと驚いたけど、まあ、やってみようと言っていたし――そう思いながら、クロエ様からの言葉に頷き、私はラウルさんの持っていた木剣に目をやった。

「ラウルさん、あの、よければ少しだけその剣をお借り出来ないでしょうか?」
「…………」
「あの……」
「大丈夫か?」
「えっ?」

 問いかけに、しばし無言で返された後、質問返しをされる。主語がなくて最初、戸惑ったが「私が剣に対して」ということだろうか? それとも「幼女が剣を持てるのか」ということだろうか?

「怖くないですよ? あ、それとも私が、剣を落としそうで心配ですか?」
「いや……わかった」
「ありがとうございます、気をつけますね」

 お礼を言うと私は昨夜、アントワーヌ様達に見せたように足元の影を使って、ラウルさんと同じくらいの高さまで持ち上げて貰った。
 そして、目を見張るラウルさんに一礼し、木剣へと手を差し出して――重かったので、私を抱える手の他に影の手を増やして、ぷるぷるしていた私の手を支えて貰った。うん、これで落とさない。一安心。