事務員から手紙がうちに届いたこともある。でも、母は払う気などさらさらない様子だった。

昨日も担任に呼び出されてその話をされ、母に話すようにと言付けされていた。

「すみません。もう少しだけ待ってもらえませんか?」

「一橋さんが謝ることじゃないわ。分かった。先生からも事務局に頼んでみる」

「ありがとうございます」

お礼を言って歩き出す。

先生、ごめんね。母はきっとあたしの学費を払う気はない。

高校に進学すると話した時も、母はあたしに言った。

『中学を卒業したら働いたらいいじゃない。高校に行くだけがすべてじゃないのよ』と。

中学を卒業したら当たり前のように高校に進学すると思っていたあたしは愕然とした。

結局、母は私立の滑り止めを受けさせてくれなかった。

それどころか最後の最後まで進学に反対の姿勢を貫いた。

『高校に入ったらお金が必要じゃない』

母の言い分はそれだった。

だから塾にも通わず独学で必死に勉強し、入試は公立の青光高校一本に絞った。

というより、絞らされたのだ。

『青光高校になら自転車で通えて定期も買わなくていいから行ってもいいけど』

母はトップクラスの進学校である青光高校にあたしが受かるはずがないと踏んでいたんだろう。

あとがなかった。もし落ちたら就職する以外に道はなかったのだ。

何もかも、全ての力をあたしはその試験に向けた。

前の日に全ての準備もした。筆記用具だってすべてチェックした。