「あっ、教科書……見せてもらえる?」

恐る恐る震える右手を差し出してみたものの、いつまで経っても教科書を渡してもらえない。

それどころか重苦しい雰囲気が漂い、私は右手を引っ込めた。

『なんか、顔に似合わなくない?』

『萌奈って顔じゃないよね』

彼女たち二人の言葉が脳内でこだますると同時に、顔が徐々に強張っていく。

恐ろしかった。

この沈黙が。リリカちゃんの言葉を真に受けて調子に乗ってしまっていた。

手の小刻みな震えに気付かれないように机の下のスカートをきつく握り締めると嶋田さんが口を開いた。

「前から思ってたんだけどさ、なんで青木さんってリリカと仲良くしてんの?」

「え……?」

「もしかしてうちらのグループに入ろうとか思ってないよね?そういうの勘弁してよね」

「そ、そんなこと思ってな――」

「なんか暗いんだもん、青木さんって。うちらともリリカともノリ合わないでしょ?そういうタイプじゃないもんね?」

「ちょっと、面と向かってそんなこと言うのやめなって。さすがにそれは可哀想じゃん!その通りだけどさ~」

二人の悪意が私に向けられているとすぐに気付いた。