ひとりぼっちでいることは苦しかった。

でも、それ以上に苦しいのは一人ぼっちでいる人だと他の生徒や他学年の生徒に知られてそういう目で見られることだった。

あの頃、私は毎日どうやったら楽になれるのかばかり考えていた。

きっと、死ねば楽になる。学校の屋上から飛び降りれば間違いなく死ぬことができるはずだ。

でも、死ねなかった。死ななかったのではなく、死ねなかったのだ。

私には私を大切に思ってくれる両親の存在があったから。

両親は私を愛してくれる。私がイジメを苦に死んでしまえばきっと両親は自責の念に駆られるだろう。

「どうして気付いてあげられなかったんだろう」

「どうして話を聞いてあげられなかったんだろう」と。

イジメを苦にしながらも命を断つまでに至らなかったのは私にはまだほんの少しだけ心に余裕があったからだ。

すぐに屋上から飛び降りることなく、両親の気持ちを考えるほんのちょっとだけの余裕が……。

――そう。あの日が来るまでは。


「ハァハァハァ……」

トイレの個室に飛び込み、鍵をかけると洋式のトイレに腰かけた。

過去の辛い記憶が蘇り過呼吸寸前になってしまった。

できるだけゆっくりと深呼吸を繰り返すと徐々に気持ちが落ち着いてきた。

スカートをぎゅっと力いっぱい握り締める。手のひらには大粒の汗をかいている。

この高校を選んだのは私をイジメた3人と同じ高校に入学したくなかったからだ。

3人はそこそこ勉強ができた。だから、その子達よりも更に上の高校を目指そうと思った。

ランクを落とすことは頭の中になかった。

高校に入れば同じレベルの人間と友達になれるだろう。

頭のいい子が揃う学校に入学すればイジメなどという卑劣な行為をする人間もいないはずだという安易な考えがあったのだ。

でも、結果はどうだ。この学校にもイジメっ子になりうる生徒はたくさんいるし、現にイジメられている子もいる。

弱肉強食とはよく言ったものだ。

私はまたこの学校でもイジメられてしまうんだろうか。

また、あんな思いを味わうのだろうか。また、あんな――。