思い返せばいつもそんなことばっかりしていたような気がする。

大人の目を気にしてばかりいる可愛げのない子供だっただろう。

子供のころから周りの変化には敏感になってしまったし、気付かなくていいことも気付いてしまう。

――やっぱりこんなの迷惑でしかない。

帰ろう。あたしがいるべき場所はここではない。

子供の頃は人の家が大好きだった。自分もその世界の住人になれたような気分になって幸せを頂いて帰れるから。

だけど、少し成長して気付いた。幸せをもらったような気持ちになれるのは一瞬で、玄関扉を開けて一歩外に出た瞬間その幸せ以上に惨めな気持ちになるということを。

だけど、帰るといっても帰る場所がない。

もうあの家はあたしの家ではなくなってしまった。

母と高橋が呑み散らかし、時に激しくケンカをし、時に信じられないぐらいの激しさで愛し合うだけに存在する家。

あたしの居場所はどこにもない。

普通の人ならば用がなくなれば自然と足は家へと向かうことだろう。

でも、あたしにはその家がない。あってないものだ。

帰る場所がないということの心細さは到底言葉では表せない。