笑わないと幸せが逃げていくという言葉もまやかしだと気付いていた。

笑っていたってあたしから幸せはどんどん逃げて行ってしまう。

泣かれるとめんどくさいから母はあんなことを言ったのだ。

分かっていた。分かっていたのに、あたしはあの悪魔のような呪文に今までずっと縛られていた。

「リリカちゃん……?」

目から大粒の涙が溢れた。

ダムが決壊してしまったみたいに次から次から溢れて止まらない。

「うぅ……う……」

目を拭う。泣いたせいでカラコンがズレて目が痛む。

自分で思うよりもずっと心はズタズタに切り裂かれて壊れる寸前だったのだと知る。

「リリカちゃん……」

あたしの隣に座ると、萌奈がギュッとあたしの体を抱きしめてくれた。

「鼻水、つくよ?」

「いいよ」

「汚れるよ?」

「いいよ」

あたしはそっと萌奈の体に腕を回して抱きしめ返す。