「バイトいってるんじゃないかなぁ~。あの子のことはちょっと分からないの」

娘が家に帰ってきているのかも把握していない様子の母親はおばさんの言う通りネグレクトなのかもしれない。

「あの、私……今日どうしてもリリカちゃんに会いたくて。でも連絡が取れなくて……」

「学校で会ったんじゃないの?」

「えっと……それは……」

リリカちゃんが謹慎になったという話をここですべきではないと思った。

黙っている私にリリカちゃんのお母さんは「そういえば、学校から何回も電話あったなぁ~」と他人事のように呟いた。

「リリカ、学校で何か問題でも起こしたのぉ?」

「それは……」

「やっぱり高校なんて行かずに働くべきだったのよ、あの子は。そうすれば学費も払わずに済んだのに」

「え……?」

「おっと、危ない危ない~」

相当酔っぱらっているようだ。倒れそうになり慌てた様子で階段の手すりに摑まる。

「あたしはねぇ、最初から反対だったの。高校なんてねぇ、お金もかかるし行く必要なんてないもの。リリカはあたしに似て可愛いし、金持ちの男でも見つけてくっついちゃえばいいって言ったのにぃ、あの子いうこと聞かないのよぉ」

ほとんど呂律が回っていない。

「入試に失敗しちゃえばよかったのに。高校入試の日に、消しゴム抜いたのに受かっちゃってさぁ。まいっちゃったわ」

リリカちゃんの母親がケラケラと楽しそうに笑う。