「――ただいま!!」

家に帰るなり母は私のことを見て驚きに目を見開いた。

それもそのはず。鏡で見なくても目の上は腫れあがり真っ赤に充血しているだろう。

「なにか……あったの?」

リリカちゃんと買い物に行ってくるということは事前に伝えてあった。

母は困惑したように私の背中に腕を回しリビングのソファに座らせた。

「泣いたの?大丈夫?」

「違うの、お母さん」

私は母の不安を取り払うようにはっきりとした口調で言った。

「私、お母さんに言いたいことがある」

「え……?」

「知ってると思うけど、中2の時、私イジメられてたの。クラスの子にも部活の子にも……みんなに無視されて誰も私と口をきいてくれなくなった。物をゴミ箱に捨てられたり、上履きを隠されたりした。それだけじゃない。机に落書きされたり、体操着袋を踏みつけられたりもした」

「萌奈……、どうして今それを……?」

母は明らかに困惑していた。

「ごめん、お母さん。でも、聞いて?きっとこのタイミングを逃したら私、一生言えないままだから」

ずっと、私は目を反らしていた。イジメられたという事実からも、母からも、全てから逃げようとして向かい合おうとはしなかった。

そして何より、私自身と。イジメられた惨めな自分と向き合いたくなかったのだ。

イジメられるのは私が弱いせいだと思っていた。

うまく周りに合わせて立ち回れなかったせい。

合わせられなかったから弾かれて、嫌われて、無視されたんだと思ってた。