天然お嬢と双子の番犬さん




そんなこんなで鐘が鳴る。
一時間目は数学の授業だ。


担任が担当の数学授業。
分かりやすいかと言えば…嘘になる。

教室に入ってきてすぐにいつもと違う事に気付く。


…いつもより胸元が開けているような?


女の人は胸元を開けるのは下品だと、パパに教わった事がある。

「胸を強調するのは馬鹿でも出来るし、猿でもやれる。乗ってくるのは安い男だけ。それでいい気になる女も同類だ。花は間違っても絶対、低能クズになり下がるなよ」─────って、言われた。


でも、担任の先生にそんな事思っちゃ失礼だよね。今日は偶々気付かずにボタンが外れてるのかもしれないし。


見なかったことにしよっと。


…そう思ってたんだけど。


男子生徒の視線は完全に先生の胸元。あえてそう言うワイシャツなのか、はち切れそうな雰囲気まであった。


「それではぁーこの問題をぉー…」


今日は先生の母音が凄く多い。あとちょっと化粧も濃いめ。リップ真っ赤。

…あっ、そっか!彼氏でも出来たのかな?そっか~、それで気合入れてるんだね!



「東雲和くぅん!」



自分の名前じゃないのにビクッ。



「前に来て書いてくださぁい」



あちゃー…。


鉛筆すら持たず、教科書すら開いて無い。ズボンのポケットに両手を突っ込み、椅子に座っていた和。
ちなみにその後ろの湊は爆睡中。

そんな和に答えられるはずがない。