極道って何するのか、正直私は全く分かってない。
ただ娘っていうだけで、皆何も教えてくれないし。私自身も特別知りたいわけじゃないから。こんな感じで良いんだと思う。
「ただいまー!」
高々と手を挙げ、門をくぐると次々とお辞儀される。これが日常。
「お嬢!若頭!おかえりなさい!」
坊主頭のグラサンで巨漢。女子供は迷わず泣くであろう見た目の男。しかしこう見えてシャイで甘いもの大好きマンである。
「みんなにお土産買って来たよ~~!」
「「「お嬢~~~!」」」
湊が買ってくれたけど!
シュークリームが入った紙袋三個を渡す。
「「「ありがとうございまーす!」」」
私買ってないけど!
「お嬢も一緒に食べましょうよ!」
「ヤッター!食べる食べる!」
沢山買ってきて良かった!食べるつもりで買って来たけど!湊が!
「お嬢、」
後ろから引っ張られ、顔を上げた。和の綺麗な顔が真上に。
「食べる前に親父に…」
「わぁ…和は何処から見てもかっこいいね」
あれ、
手を伸ばし頬に触れた。
熱い。熱を帯びてる。
「和?どうしたの?具合悪い?」
「…ッ、違うから。ほら行くよ」
手を引かれ、足を踏まないよう気を付けながら歩いた。
耳まで赤くなってる。
もしかして、風邪?
最近流行ってるもんね。
「……天然たらし」
「ん?なんか言った?湊」
「なんでもねぇよ」
二人に連れられて、金魚の柄が描かれた襖の前に立った。


