天然お嬢と双子の番犬さん




…思わず勝手に傷に触れたけど。

自分の嫌いな所に勝手に触れて、見られて…嫌だったよね?古傷は痛むって聞いたこともあるし…。

遠い昔の怪我をしていた強面のおじさんを思い出す。春比古くんの傷なんて、可愛いもんだと言いそうなほどの大怪我をしていた人だった。



「ごめっ…、」



離れる手首を掴まれた。
もう一度傷の方に引っ張られる。



「そんなん初めて言われたわ」

「はるひこ、くん?」



凄く小さい声で言ったから、私には聞こえなかった。



「これな…手術してもう無くなるんや。そやけど、そうか…かなんな。ヒーローの証ちゅうのが消えるんは─────、」



笑った。


詩歌ちゃんに見せるみたいに、優しく笑ってくれた。何か吹っ切れたようなそんな感じが伝わってくる。あれだけ嫌そうだったのに、今はそんな感じがしなかった。



「本当!良かったね!それに大丈夫だよ。春比古くんがヒーローなのには変わりないから、」



目に見える証が無くなるだけで。

詩歌ちゃんにとってはずっとヒーローだって、私はそう思うから。