女の子の名前は、右京 詩歌ちゃん。今日はお父さんのお仕事でここに来ているのだと言った。
右京組。京都を拠点に活動している極道で、関西を仕切っている所らしい。
…そう教えてくれたのは何と詩歌ちゃんで。
私は全く知りませんでした。はい。
こんな事も知らない全国トップの娘って…。
『うち、誰かとこない話すの初めて。楽しなぁ』
「お友達は?」
詩歌ちゃんは左右に首を振った。悲しそうに、ちょっぴり泣きそうに。
耳が聞こえないから、家族以外とお話する事が難しく、友達がいないのだと小さな手で話してくれた。
…まるで幼い頃の私。
極道の娘だからって、先生にもヘコヘコされて友達には怖いって思われて。幼稚園ではずっと独りぼっちだった。
話してみないと分からないのにね。
「それじゃあ…私とお友達になってくれないかな?」
笑顔で言うと、詩歌ちゃんが目を見開いた。
『友達…なってくれるん?』
「うん。私もお友達少ないの。だからなってくれたら嬉しいなぁ」
パァっと笑顔になった詩歌ちゃん。手話の速度が速くなって、喜んでいるのが興奮具合からも良く分かった。


