天然お嬢と双子の番犬さん



…いつの間に来たんだろ。
着替えている間かな?


──────てん、
視線の先に転がってきたのはピンク色のボールだった。

パールピンク色のサッカーボールくらいの大きさ。幼い頃に一度は遊んだことがあるような丸い弾力のあるボール。


それを拾いつつ、何処から転がって来たのかと周りを見た。

でもこの家からご近所さんまで大分離れているし、空き地が合っても誰も怖がって近寄って来ない。子供でもそうだった。



誰が…、



転がってきた右側の方を向いた。

…女の子?



水色のスモックを着た二つ結びの女の子がいた。静かに近づいて同じ目線になるようしゃがんだ。


「これ、あなたの?」



少し笑って優しく言った。だけど返事はない。凄く焦ってるような気がする。


もしかして間違って入ってきちゃって怖いのかな?



「心配しないで。みんな優しいから、誰も怒らないよ。あなたは何処から来たの?」


「……、…」



キョロキョロと不安そうに周りを見ている。


あれ、この子…、


顔を左右に向けるたび、耳についたそれを見つけた。イヤホンのような小さなそれを。一度ボールを置いてから、驚かさないように小さく肩を叩いた。こっちを見た所で両手を動かす。


「はじめまして」


手話だ。

昔パパ達の仕事が長引いて暇だった私の暇つぶしだった手話。段々面白くなってきて、しっかり手話で会話できるぐらいまでに成長していた。今はもううろ覚えだけど。

吃驚する女の子。
直ぐに手話で返事が来る。


『手話出来るん?』

「少しだけど…でも、良かったら私の御話し相手になってくれると嬉しいな」


女の子の目がキラキラと輝いて、大きく頷いた。