天然お嬢と双子の番犬さん

***



夜、時刻は十時過ぎ。
縁側に二人の影が映る。


──────和と湊だ。


湊の隣にある灰皿には沢山の煙草の吸殻。吸っていた煙草を押し付け、新しい煙草を咥える。

隣では膝の上で頬杖を付く和がいた。
ぼーっと、庭の景色を眺めている。


「お嬢に悪戯したい」

「…は、」


突然の和の宣言に、湊の気の抜けた声が出る。
……しばし、沈黙。



「お嬢に悪戯したい!」

「聞こえてっから、無視してんだろうが」



二度目の宣言に思わず返事をしてしまった湊。



「え、湊はしたくないの?大丈夫か?」

「俺の台詞だろ、絶対」


真顔の問いに真顔で返事。溜息をついた和に湊は隣で煙草の煙を吐く。



「純粋無垢代表って感じするじゃんお嬢って」


「……うるせぇな」


「あ、否定しないって事は湊も思ってたってことか」



ケラケラ笑う和に湊の眉間のしわが増えた。



風が吹く。
夜風に揺れて緑の葉が舞い散る。

笑っていたはずの和が真顔に。
見ているのは、雲に隠れそうな満月。