「ここで何話してんだ」
黒色の浴衣を着た湊が来た。
袖に手を入れている。
「転んだ時、痛いやつ!」
「…は?」
その状態で転んだら、手が隠れてるから頭から行くやつだぞ!痛いじゃん!
「手!出した方が怪我しないと思う!」
「俺は転ばねぇ」
「へぇ…じゃあ転んでみる?」
人間って意外と故意では転べないと思うけど?
歩く湊の前に出た足。
跨ぎにくい高さに足かけをした。
浴衣着てるし、一歩が普通より小さいから…まあ、私なら確実に転ぶやつ。
躓く湊。
ああ、これは転ぶと思った瞬間。
目の前で宙に浮く。
「…ッ、んだよ。急に」
「うわー、空気読んでほしー」
「無傷!前転宙返り!満点!」
体操選手も吃驚なアクロバティック!浴衣で!
その場で拍手。
流石と言うか、年齢を感じさせないと言うか…現役女子高生なのに。私なら何もできず転ぶんだろうなぁ。
二人の体育してるとことか凄くかっこよかったのかも。
…うーん、やっぱりちょっと残念。
「お嬢?どうしたの?」
和が首を傾げた。
「二人共、もう学校来ないんでしょ?だから残念だなぁって思って」
「…誰が言った?」
「ううん。誰も言ってないよ。でもお仕事でしょ?」
「あー、あれは僕達じゃなくても何とかなるからね。これからもお嬢と一緒に学校行けるよ」


