「……お嬢、」



和が滲んで見える。話してる最中に涙が溢れたから、そう見えるんだ。



「触れていい?」



頬まで伸び掛けて止まった手。

私は小さく頷いた。



左頬が包む大きなぬくもり。
涙は親指で拭われた。


……和の手だ。
さっきと違う感じがする。

同じ手なのに、変なの。




「へへ…和の手、気持ちいいね」




心がぽかぽかしてる。

目尻に溜まっていた涙は目を閉じると、和の手の甲にポタリと落ちた。



「───お嬢…僕は、」



バタン、なんて大きな音がした。

それは戸が勢いよく開いて当たった音だったらしい。



そこにいた人を見た時、私は目を大きく見開いた。

だって予想外だったから。




「ぱ……ぱ…?」




…凄く静かだった。


パパがこんなに静かに、だけど威圧的な怒りをしているのを、私は初めて見た。