天然お嬢と双子の番犬さん

「フィンランドの挨拶?」

「……まあ、場所によってはそうですね」


また溜息!


「…手の甲へのキスは尊敬や敬愛の気持ちを表す為と言われています」

「へぇ。そうなんだぁ…じゃあ欧米の人って全員に尊敬してるの?」

「……欧米では単なる挨拶として好きな人の手の甲にキスする場合が多いそうです」


溜息交じりのうんちくは、私にとってはかなりの勉強になった。


「じゃあ、リヒトさんはやっぱり挨拶だったんだね」

「………私が?」


え?だって女嫌いのリヒトさんが私に尊敬とか…ナイナイ。

リヒトさんは今度は深く溜息を吐くと、指を絡ませた。


「仕事上で何度もしたことがあります」


ほらやっぱり。

リヒトさんは、しかし…と話を続ける。


「素手で触れ、しっかりと手の甲へ唇を付けたのは…花さんが初めてです」


汗ばむリヒトさんの手。
きっとずっと手袋越しで女性に触れて来たんだ。

少しでも距離を取りたくて。



「花さんにだけ…私は生まれて初めて触れたいと思いました。これが恋ではないのですか?」



────────っ、


「多分違うと思います…」


だって私が和と湊に感じる事と全然違うもん…。


リヒトさんは眉をひそめると、私の手を振り解いた。



「………ここから一切出る事を禁じます」

「えっ!?なんで!!?」



トイレは!?


リヒトさんは私の問いに全く反応する事無く、勢いよく襖を閉じた。