場面は変わり、ある居酒屋にて。
酒井秋季は五十嵐竜二に呼ばれていた。
「……全く。何を呑気に、」
「おー!やっと来たなぁ」
既に出来上がっている竜二に秋季は大きく溜息をついていた。
あれほど酒の量には気を付けろと言っていたばかりだ。
それなのに竜二は全く医者の言う事を聞きやしない。
呆れるほどの馬鹿だと秋季は思っていた。
「居酒屋でお茶だぁ?俺の奢りだぞ?」
「黙りなさい。酔っ払い」
竜二はケラケラと笑っていた。そういう所もそっくりだと、何度も繰り返し言っている。
「いやぁー…、これでようやく何も心配いらね~なぁ」
嬉しそうな竜二とは反対な秋季。
「リヒトは女嫌いだからな。花に手出す心配ねぇから、これで俺もようやく肩の荷が下りるってもんよ」
「……まあ、そうですね」
「秋季には感謝してるんだぞ~?秋季がいなきゃ、あんなツテ手に入るわけなかったからなっ!」
バシバシと秋季の背中を叩く竜二にお茶をぶっかけた。全国No.1の組長相手に、物怖じしない態度が出来るのは秋季ぐらいだろう。
「忘れましたか?」
「あ~?何がだぁ?」
秋季は溜息をついた。
「千夏が昔、そんな境遇の男を豹変させたのを」
「…あー…、ま、まあでも花は割とリヒトの事嫌ってるし…大丈夫…だろ…、」
「………さあ、どうでしょうね」
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