ハンカチなんて持っていなかったから、浴衣の袖を当てた。

痛そうに目を何度も細める留華。



「…お嬢、汚れる」



この一着がどれほどの価値なのか、知らないわけじゃない。



「いいの…留華が大事、だから」



だけど、それよりも留華の方が重要だから。



血が出てる。
…痛そう。



思いっきり殴られたんだ。



「留華…救急箱、」

「持ってこなくていいよ。俺も一緒に行くから」



立ち上がろうとする留華と一緒に腰を上げる。


───その時、




「ッ…、」




留華に触れていた手首を掴まれた。




「……なんで?」




や…まと…。





「なんで僕じゃないの?」





表情が強張っていた。